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2013.08.19 過去のニュース

ナオコへの手紙 7

ナオコへの手紙                                 

浅香 洋一

虹のむこう側へ行ってみたい。大きな青空を仰いで、段々とアーチに近づいて、………

上を向いた首がいたくなる程、そりかえって。あっ、今真下にいる。そして振り返ったら、虹の色調が裏返って見えないかしらと思っていました。幼い頃の思いです。もちろんこの願いは、決してかなえられないこと。大気中の水蒸気、プリズム作用等などの知識が増えていくのに従って、虹はどうやら僕の目の前に、その美しい姿さえ出し惜しんでいるようですし………

最近 虹を見ましたか。

虹という漢字の偏は、虫。ここでは大蛇を意味すると言います。作りの工は、上の ― が天、下の ― が大地、中の 丨 がそれをつなぐもの。天空と大地をつなぐ大蛇が虹なのだそうです。ヘビというと、ちょっと、眉をひそめたくなりますが、こんな話はどうでしょう。

月の女神に恋した若者の話。はじめての出逢いは、木の葉を揺らす夕立ちが去った後でした。宵までのつかのまの残照。芭蕉の大きな葉で薄暗い池の端が、明るいのです。うたたねを雨音に破られた若者は、そこに佇む少女をみました。黙して語らぬ娘の目に魅かれました。それから、毎夕、少女のおもかげを慕い、池の端に足を運ぶ若者。願いはただ一つ、

声を聴きたいということ。でもその声はおろか、近づくこともできません。そして、遠くから見つめることしかできない毎日でした。

へびが若者に語りかけました。「あきらめなさい、月の女神なのですから。心はいつも変わりやすく、姿を変えます。あなたの強い恋心も通じないでしょう」

話はこれでおわりです。エッ、どこが虹の話だと不満ですか。虹の架け橋を渡ることのできないのはしかたのないことですね。つかの間の出逢い、だからこその強い憧れが大地であり、若者なのだと謎ときをしてはつまらないのですが。もう一つ謎は残ります。そう、蛇は何なのか。天と地をつなぐものが蛇。それなら、若者はこの話の後、月の世界につれていってもらえたかも知れません。あの夕立ちの後の短い「時」しか二人は逢えません。

だからこそ

若者の想いに応えて虹は輝くと思うのです。


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